そろそろきみは、蹴られてくれ。


乾いた大きな音が鳴り響いて、選手たちが一斉に走り出す。


花乃は……2位。


1位との差も、3位との差も、だいたい同じくらいで──10メートルほどだろうか。


脚の回転が速くて、肩は前後に小さく動いて、腕の振りはちから強い。


彼女の髪がくらくらと揺れている。


凛とした顔つきで、まっすぐと前を見て……走っていた。


『おっしゃ、おれらの1000メートル走で貢献しようぜ』

『目指せ1位!』


ふたりの声が、頭の中でぐるぐる、回る。

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