そろそろきみは、蹴られてくれ。
「花乃、楽しかったんだよね?」
「……うん。みんなが応援してくれたから、元から走るのがすきなことにプラスしてね、さらに楽しかったの」
息を吸う。
わたしのこの言葉で、あっているのかな。そういう自信は、ぜんぜんない。
でも。
正解不正解だけじゃ判断できないことも、そもそも正解不正解が判断できないことも、たくさんあるはずだから。
「じゃあそれだけで、ぜんぶ、いいんだよ」
「っえ? だけど、だって、わたし……勝てなかったし」
「わたしが、わたしたちが、花乃にしてほしかったこと……勝ちじゃないんだよ」
花乃の息を吸う音が、聞こえた。