そろそろきみは、蹴られてくれ。


ほんとうに大丈夫? この言葉、言っても傷つけない?


暴れ回る心臓を抑えつけて、続ける。


「楽しんでほしい、それだけだったの」


そのとき、花乃が。


わたしの背中に手を添えた。


徐々に徐々に、ちからが込められていって……。


「わたし、走りながらね、ずっと背中を見ていたの。追いつけなくて、追い越せなくて。……それで」


──1位って言ってたのに、結局、できなくて。ごめんって、そればっかりになっちゃって。


泣き出しそうな花乃の、震える肩を撫でる。

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