そろそろきみは、蹴られてくれ。


「──これ」


篠山くんが、花乃の頭からタオルを被せた。


「つかってないから、その……心配、しないで。おれの持ち物だから、いやかもしれないけど──そこはごめんって感じで、」


花乃、泣いているんだ。


わかって、目を閉じた。


「篠山くん、ありがとう」


震えた声が聞こえて、目を開ける。


篠山くんを見ると、きつくきつく、こぶしを握っていた。

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