そろそろきみは、蹴られてくれ。


声を張り上げて、目で追って、応援して。


いまなら、声が枯れてもいい。


このリレーを応援しきって枯れるなら、後悔なんてない。


篠山くんが第3走者にバトンを送り、コースを抜けて、呼吸を繰り返す。


花乃を見ると、手をくちもとに寄せながら大きく口を開けていた。


ほんとう、花乃、かっこいい。


篠山くんも、かっこよくて。


心が、目が、奪われる。それって、きっとこういうことだと思った。


ちらり、橘を見る。


──時が、止まった。

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