そろそろきみは、蹴られてくれ。


「橘、頑張れ」


こんな小さな声じゃ、伝わらない。


わたしの声も、応援も、気持ちも。


そうだよ、わたしだって、しっかりと。


大きな声で。


瞬間、大きな風が吹いて、まわりの歓声が再び耳に届く。


ポニーテールが風になびいて、首筋で毛先が揺れ動いた。


みんなの声に負けない、橘の走り。


オーラと、真剣な表情と、すべてに。


圧倒されて、わたしも負けじと声を張り上げる。

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