そろそろきみは、蹴られてくれ。


3年生、応援団のリレーを見るために、リレー選手たちが戻ってきた。


彼らへと、みんなが口々に声をかける。


お疲れ様、おめでとう、かっこよかったよ。


──わたしも言いたい。


遠くにいるみんなに言おうと、息を吸い込むと。


橘がこっそり、駆け寄って来た。


目の前にいる彼に伝えたくて、口を開いたのに。


そのままの姿勢で、固まってしまう。


「このあと、聞いてほしいことがある」


耳元で、橘の声。


耳にふわりと、橘の吐息。


「放課後、ぜんぶが終わったら……校舎裏に来てほしい」


声を出すことも忘れて、ただただうなずくわたしに。


橘は小さく微笑んで、みんなの前へと戻って行った。

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