そろそろきみは、蹴られてくれ。


「なんでって……なんで、そんなふうに聞くの」


困惑したような橘が、眉を下げる。


その横顔を、見て。すきですきで、しかたないと自覚して。


やさしさばかりがあふれる、橘の表情がすき。


仕草がすき。


冗談めかして、わたしたちの心にするりとはいってきてくれるところだってすき。


それは、悪意なんてなくて。下心は、まあ、うん、あるかもしれないけれど──わたしを、導いてくれて。


たとえば、暗い思考になったとき。


手を、差し伸べてくれて。


たとえば、うれしいことがあったとき。


いちばんに報告、したくなって。させてくれて。


ねぇ橘。言いきれないくらい、抱えきれないくらい、すきなんだよ。

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