そろそろきみは、蹴られてくれ。
「橘、いままで、そんなことなかったじゃん!」
「そんなことって?」
きっと、このふたりは、橘のことがすきなんだろうな。
思って、痛くて、くるしい。
どうして橘のことをすきになってしまったんだろう、って、ふとしたときに後悔することもあった。
あんなにかっこいいひとを。やさしすぎるひとを。人気なひとを。どうして。って。
それでも結局は、橘がどうしようもなくすきって、それだけが浮かぶから。
「ひとりの女子に、構うみたいな……いままで、なかったのにっ」
涙を堪えるような声に、わたしまで指先にちからがこもる。
「なんで、……茅田さんなの」
言えることがなくて言った、ふうにも、聞こえた。わたしが都合よく解釈しただけだろうか。