そろそろきみは、蹴られてくれ。


「……──」


橘が、息を吸い込んだ状態で固まる。


瞳を濡らした彼女たちが、また、口を開いて。


「茅田さん変なひとじゃん!」


叫んだ。


……う、たしかに変なひとだけど。他クラスにまで情報がまわっているとは。


「うん、変だよね」


迷わず、と言ったように答えた橘。


──えぇ、せめて橘は否定してよ……。


女子ふたりの恋模様の本気に、それを目の前で見ているという状況に、わたしの心臓はたいへんなことになっているらしい。


緊張と、痛みと、にがみと。


いま、ぜんぶ、しってる。

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