そろそろきみは、蹴られてくれ。





「でも、紗奈ちゃんを変にしてるのはおれだよ」





眉尻を下げて、へにゃり、というふうに笑った橘が、左の耳に髪をかける。


きらきらしてて、まぶしくて。


「紗奈ちゃん……って、茅田さん、呼びは」

「うん、ごめんね」


ごめん。ふたりに向かって、もういちど小さくつぶやいた橘。


いまさらだけど、やっぱりわたし、ここにいないほうがよかった気がする。話の内容的に、なおさら。

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