そろそろきみは、蹴られてくれ。


あのさ。まばたきをしたら、涙をこぼしてしまいそうなふたりが、絞り出すみたいに。


「明日からも、話してくれる?」


眉をゆがめて、言った。


橘も同じような表情を一瞬浮かべてから、


「あたりまえだろ」


って、返して。


ふたりは「またね」と言ってから、わたしと反対方向に向かって駆け出して行った。


わたしと橘からは、その後ろ姿しか見えないけれど。


隠れて、涙をぬぐっているんだな。


気がついて、胸がぎゅうっとなった。

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