そろそろきみは、蹴られてくれ。
「橘くんはまだ知らないかもだけど……。真咲くんは知ってるよ。この紙を届けてくれたの、真咲くんだから」
「あっ、そうなんだね! あとでお礼言っておこう。橘には、着替え終わったら言いに──……?」
「紗奈ちゃん、どうしたの?」
唐突に言葉に詰まった。急な脳のフル回転はよくない。ていうかこれ、まわりすぎて答え見失ってる? なわけないか。わたしだもん。
回転自体はまったくもって早くないと思い直した。
単純に、びっくりして答えが出なかっただけだ。
「真咲くん呼び、に、なったんだね」
「……っ! あ、うん、そうなの! 言ってなかったね……えへへ、照れる」
顔を赤くして、首筋をかいた花乃。んん、可愛い!
不思議に思った正体は、名前呼びだった。
名前呼びかあ……。