そろそろきみは、蹴られてくれ。


もしかしてだけど、無自覚の表情だった? わたしの深読みしすぎ? はやとちり??


「えっと……、いま、何考えてた?」

「いま? 紗奈ちゃんと会えてうれしいー!って」

「わ……んんっ、その前! わたしが話しかける前、どんなこと考えてた?」


わたしも橘と会えてうれしいー!


テンション高く言いそうになって、咳払いで誤魔化した。


咳払いの練習、しておこうと思います。下手すぎた。


「前……? 紗奈ちゃんに会いたいなぁって」

「っん!?」


まってまってまって、唐突なきゅんはよくない、よくないよ橘、有罪!


「わたし……? ちょっと、え、ええ!?」


語彙力吹っ飛んだ、返して。


「会えない時間が長すぎて、寂しかった。幻聴、かと、思った……え、どうしたの?」


胸を押さえてしゃがみこんだわたしに、橘の慌てた声が降ってくる。

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