そろそろきみは、蹴られてくれ。


「ダメだよ」

「なんで?」

「なんでって……そりゃ、学校だし」


みんないるし。


「学校だからダメ? なんで?」

「ひ、ひとがいるから?」

「だれも見てないよ、いま」

「ええ、でも、その、心の準備が」


ふぅん。橘は言って、にやりと笑った。


「ひとが近くにいなくて、心の準備をするだけの十分な時間があれば、いいんだ」


ひえ。まさかそんな、いやいや!


「まあ、いまはしないんだけどね」


……ん?


「しないの?」

「していいの?」

「っダメ!」

「でしょ、しないよ。ね、何か話があったんだよね?」


──くやしい……。

< 472 / 625 >

この作品をシェア

pagetop