そろそろきみは、蹴られてくれ。


「ふつかめの午前中、バスケ部の出し物で抜けることになった……」


ばっと勢いよく顔を上げた彼が、わたしの手を取って、両のてのひらで包み込んだ。


「ほんとうにごめんね、クラスのシフトが確定するまではあやふやだったんだけど、ふつかめの午前中はひとが少ないから、そこにシフトが入らなかったらっていう話になってて」


……あ。


「そのあいだ、紗奈ちゃんひとりになっちゃうかな」


橘、涙目。


「ごめんね……」


いまにもこぼれそうなくらい涙を溜めていて、ええ、泣かないで!


「なんで泣くの、泣かないで大丈夫だよ!」

「だってだって、約束してたのに、急にひとりで待っててなんて……。まわれるひとがいたらいいけど──」


言葉を切った橘に、たしかに、もう文化祭目前だから……みんなまわるひとは決まっているよね、と納得。


でもそれは、あくまでも、ほかのだれかと過ごすならの話。

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