そろそろきみは、蹴られてくれ。


ハンカチ……取りたいだけなんだけど、なんでそんなに必死に──。おもちゃ買ってくれるまで動かないこども? っ、想像したら可愛すぎて無理、いやちがう、手を、ねえってば。


「……離してほしい? 離したほうがいい?」

「????」


なんか橘、いつもとちがうね? テンションというかなんというか。思考は同じな気もするけども。


「まあ、いずれは離してほしいかな」


可愛いを吸い込みすぎたせいで慌てている脳内。


冷静になろうと、可愛くないことを言っちゃった。橘と話しはじめてすぐの頃、こんな感じだったっけ。自分でも引くほど可愛くないな……。


「でも」


橘がハンカチもティッシュもいらないって言うなら、わたしはそれ以外のもので何かをしたいって思うんだ。


その何かは、普段だったらわからないって誤魔化したり、恥ずかしがって中途半端にしたりしてしまう。


──今日は、わかるし。もう吹っ切れてるし。目を見るって決めてきたし。


思いっきり、あまえるね。


「いまは、離してほしくない。全力でつかんどいてほしい」

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