そろそろきみは、蹴られてくれ。


つかんどいてほしい……、と、理解を早めるようにして繰り返した橘。


目を丸くする橘。


ずいと顔を寄せた橘。


「さ、紗奈ちゃん、熱ある?」

「……どういうこと?」

「熱であまえたになってるの? それとも、熱に浮かされて本音がもれちゃった?」


わたしが素直になるのは、そんなにも珍しいことなのか……。と一瞬思って、そりゃそうだよね、わたしが伝えたりていない。と思い直す。


「熱、ないよ」


なんにしても、本音だとわかってもらえてよかった。うれしい。


こんなわたしだけれど、そこを汲んでくれている彼に、ぼっと熱くなってくる。

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