そろそろきみは、蹴られてくれ。


「本音、言ってみた、だけ……」


声量の下がっていくわたしに、橘が静かに微笑んで。


そっと片手を離した。


どうしたの。って。顔を上げて。


……あ。


「つかまえた」


そのつかむ、は、漢字がちがうんじゃない? なんて。


言わない。そんなこと。言えない。


重なった瞳の奥の奥が、じくじく熱い。


スローモーションみたいに降りてくる橘のくちびるに、ぎゅうと目をつぶった。


「紗奈ちゃん」


優しい声。


その声は何かを含んでいるようにも思える。何? ──熱。

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