そろそろきみは、蹴られてくれ。


「っえ」


意表をつかれた、みたいな、顔。浮かべないで。


ごめんね、こんなによくばりになっちゃって。


「されると、思ったの。思ったのが、その…………恥ずかしくなっちゃった」


期待に近かった。してくれるかなって。


わたしがダメだって言ったからなのに。あと、学校だから。──めんどうな彼女だと思う。でも、それでも、表に出してしまったのは。


いつか、笑い話にしてくれるかもしれないなというあまえ。


「んー……。なんでって、なんでだろう?」


自問自答をはじめた橘に、へ? と間抜けな声が漏れた。


「た、橘、理由があってしたんじゃないの?」


いつも言ってくれる可愛いも、理由のひとつだろうし。何かしらわけがあると思っていた。うっ、可愛いを自覚しているみたいでなんか変だな、してないよ、いまでも橘はおかしいと確信してる。

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