そろそろきみは、蹴られてくれ。


この前は橘から逃げてしまったけれど、それ以降話していないというわけではない。


ただ、橘があまりにも『紗奈ちゃんは可愛い』を繰り返すから、こいつほんとうに大丈夫かなと不安になった。


目か? それとも頭か?


今日の橘は、眼鏡をかけているわたしに目を見開いたあと、にっこりわらった。有無を言わさぬ圧のある笑顔。


こわくてちょっとだけ震えた。ちょっとね。


あと10分くらい時間があったら、トイレで手を洗ってコンタクトに変えてきたんだけど……時間ないし。ほら、10分もあれば余裕をもって帰ってくることができる。


でも、コンタクトはしなくたって、いまの通り眼鏡で過ごせるじゃん。そんな私情で時間ギリギリになるわけには……。


うう、コンタクトだと目が乾いてしまうし、暗いから目薬させないし、考えてきたんだ。眼鏡にしよう! って。


大丈夫、4人でまわるときには急いでコンタクトいれるから。


眼鏡関係でぐるぐる悩むことがなくなる。


似合ってないかなとかなんとか、考えながらまわるのはいやだもんね。

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