そろそろきみは、蹴られてくれ。


開かれた口が紡いだのは、


「それ、外してよ」


いまいちばんドキリとする言葉だった。


確実に眼鏡のことだ。顔の側面をたどるフレームを、橘の人さし指がそぉっと駆けている。


「なんで」

「だってさあ」


……あ。


これはやばい、と思った。息吸うの、忘れた。というよりも、するタイミングをくれなかった。


今日の橘のキス、なんか、意地悪?


離れたと思ったら、角度が変えられて。


また、上から降ってくる。


長いんだろうなと予想して、ゆっくりと目を閉じた。


長いんだろうな、なんて、最強に可愛くない言葉選びだけど。

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