そろそろきみは、蹴られてくれ。


「っあ」


背伸びをして、背中にてのひらを添えて、応じてる。そういうところだよ、わたし。すきが隠しきれないの。


途中、眼鏡がずり上がって、皮膚にあつくない熱をあたえた。


でも、橘のせいだから。さして気にならない。


「……しづらい」


さすがに長すぎて、息がくるしいよ。


右手でどんどんと胸を叩くと、一瞬、離れた。つぶやかれた言葉が、頭から離れない。


安心して呼吸を再開すると、くちびるを舐められて。……ほんのすこしだけ。


背中から離し損ねた左手が、思わず、爪を立ててしまった。


驚きの隠せないわたしに、橘は眉寄せて不機嫌そうに続ける。


「可愛いけど、却下。つか可愛すぎてダメ。みんな惚れちゃう」

「〜っ、あほ! ばか! 誰も惚れないし!」


紗奈ちゃんに誰も惚れない──?


と、ピンと来ていないらしく言った彼を放置して。──わたしの脳内はパニックだ。


なんて言えばいいのかわからない。わからないから、思ったままにしか出なかった。


「わたしのことすきなの、あんたいればもうほかにいらないし……」

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