そろそろきみは、蹴られてくれ。
「〜っ、ばか! っていうか、なんで、キスしたの!」
「だっておれ、いいこでまってたでしょ?」
まってた? 何が。
「シフト発表された日から、ずっと、心の準備させてたでしょ。いまこの瞬間が、絶好のチャンスだと思ったんだけど」
『ふぅん。ひとが近くにいなくて、心の準備をするだけの十分な時間があれば、いいんだ』
っ、ほんと、ばか。
橘のばか、わたしのばか、ちょっとだいぶうれしくなっちゃったのもばかの塊でしかない、このやろう!
顔が近づけられて、きつく目を閉じる。
ちゅ、と頬にキスを落とされて、思わず呼吸を忘れてしまった。
「へへ」
彼はわらって、来た道を戻っていく。……わたしは、戻れないでいた。