そろそろきみは、蹴られてくれ。
大丈夫、男の子への対応が終わったら、たぶんこっち見る……よね。
気づいてくれないことには、不審者の名を卒業できない。気づいてもらえたら不審者じゃなくなるってわけでもないから、令状をとってこられてしまうパターンもあるんだけど何言ってんだ、頭の中がうるさい。
あと2分くらい耐えたい──。
「あっ、涼雅の彼女サン!」
はい、終わった。背後から声がした。……後ろ姿でばれるくらい、普段から不審者ってことなのかな。
終わったと思うけど、終わりってなんですか? な顔でしれっと振り返ろ。
「あの、茅田紗奈さんですよね?」
「そうです」
おお、フルネーム……。そうですって返答は何だ、これ以外浮かばなかったけど、面接か? それとも逮捕直前か? 橘! へるぷ!!!!
「紗奈ちゃんさんだ!」
「さ……なちゃん、さん?」
「うん。涼雅がいつも、 “ 紗奈ちゃん ” を探してるから」
「いつも?」
はてなが多い。うーんと……話したことはなかった方々だけど、たぶん同い年だよね。