そろそろきみは、蹴られてくれ。


「……おまえら──」


頭上からの声に、びくぅ!


過剰なくらいに驚いてしまった。


ロボット並みにギ、ギ、ギと振り向く。


「なんで言っちゃうの!」


恥ずい、とちがうほうに目をやっちゃって。


「でもだって、ほら! 涼雅、誤魔化したりうそついたりできんのにしないじゃん! なんで言っちゃうのって、認めてんじゃんか」


たしかにそうだ。


「うそとか、……つかねぇよ」


思っいきり恥ずかしそうにしてるくせに。


「ただちょっと、かっこつけてたかったのに」


そうやってかっこよくて、さらにわたしを溺れさせちゃう。


そういうりょ……っ、橘! 橘だからすきなんだよ、うん!


──……あっぶない、いま、名前呼びするところだった。みんなが名前で言ってたから! つい!


焦らず、決心のついた、ここぞというタイミングで呼ぶって決めてるんだもん。うっかりで呼んじゃって、あああああって叫ぶのはいやだ。


いまは心のなかでの言葉だったし、いきなり叫び出したらそろそろやばいと思うからね。

< 538 / 625 >

この作品をシェア

pagetop