そろそろきみは、蹴られてくれ。
*
「紗奈ちゃん紗奈ちゃん、すごいよ!」
後夜祭がはじまってから、橘はずっとこんな感じ。
みんな聞いて、この可愛いひと、可愛すぎる天使、わたしの彼氏なの……やば。
あっ、ものすごい直な声でやばってもれた気がする、えー! やばーい! みたいな女子高生のキャピキャピ感を捨ててしまった、は? やば……くらいで言っちゃった! うわ!!!
声にでてないといいけど、「どした?」こう聞かれるってことは出てたんだよなあ。
「いや……んん、えっと、たのしみだねーって」
うっ、冷や汗が止まらない。
花火があがるまで、グラウンドの中央にあるキャンプファイヤーのそばで待機。
かけられている流行りの音楽に合わせて踊っているひとたちや、手を繋いで話している男女や、すぐそばでおこなわれている呼び出し。
橘はまだ呼ばれていない。このまま呼ばれなきゃいいのに……なんて、それはわがままだよね。