そろそろきみは、蹴られてくれ。





「紗奈ちゃん紗奈ちゃん、すごいよ!」


後夜祭がはじまってから、橘はずっとこんな感じ。


みんな聞いて、この可愛いひと、可愛すぎる天使、わたしの彼氏なの……やば。


あっ、ものすごい直な声でやばってもれた気がする、えー! やばーい! みたいな女子高生のキャピキャピ感を捨ててしまった、は? やば……くらいで言っちゃった! うわ!!!


声にでてないといいけど、「どした?」こう聞かれるってことは出てたんだよなあ。


「いや……んん、えっと、たのしみだねーって」


うっ、冷や汗が止まらない。


花火があがるまで、グラウンドの中央にあるキャンプファイヤーのそばで待機。


かけられている流行りの音楽に合わせて踊っているひとたちや、手を繋いで話している男女や、すぐそばでおこなわれている呼び出し。


橘はまだ呼ばれていない。このまま呼ばれなきゃいいのに……なんて、それはわがままだよね。

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