そろそろきみは、蹴られてくれ。


付き合えたのがわたしだというだけで、ほかのひとにもすきになる権利はあるわけで。


そのうえで橘がだれを選ぶのか、がいちばん重視されるところ。


なんて言いながら、振られること、こわがってる。笑顔で送り出せるかどうかはあやしい。


踊るのが得意でないわたしと、流行りの曲はよくわからないと言った橘は、グラウンドの端のほうの階段のすみに座っている。


すぐ上の段にもひとがいて、なんだかちょっと落ち着かなさはあるかもしれない、無駄にまわりを見ちゃってるもん。


「キャンプファイヤー、綺麗だね」

「……ちかくいく?」

「でも、ちかくいったら踊らなきゃ」


う、踊るのは得意じゃないけど。


──橘となら、下手でもたのしめるかもしれない。

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