そろそろきみは、蹴られてくれ。


「あ、さっきさ、キャンプファイヤーの準備の前。高速で巨大迷路が片付けられていったの、すごかったよね」


たしかにすごかった。会場準備のために急ぐ、ってその準備係のひとが言っていたけど、急ぐってなんだっけ……なレベルぐらいはやかった。


……ねぇ、橘。


「──……話題、変えなくていいよ」


気をつかわなくていいよ。


たしかにわたしは、ダンス苦手だよ。流行りの音楽だってぜんぜんわからないよ。


だけど、でも、そんなわたしに無理をさせまいと気をつかってくれるのは、うれしいっちゃうれしいけど……わたしが邪魔かなと思うんだ。


「あー…………ばれるかぁ、やっぱり」

「気、つかってくれてたの?」

「……ん? つかってるつもりはないよ」

「っえ」


ええ! ってことは、わたし、自分に向けられたものじゃあないのに、勝手にヒロイン気分を味わっていましたか!?


うわ、うああ、やっぱりシャベルほしい。

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