そろそろきみは、蹴られてくれ。


「あのね、ちょっと、緊張してて」

「緊張?」

「うん。わがまま言ってもいい?」


その言葉に、一瞬ためらう。


えーっと……スカートの中を覗いたり、汗を食べようとしたりしますか? 冷や汗かいたばっかりだから、こわすぎるんですけれども。


「言うだけ、なら」


聞くかはわからない、常識の範囲! ね!


「……おれね、」


うん。うなずいて、よく目を合わせる。


橘の視線とぶつかって、それでも跳ね返されることはなく、絡まる。


よかった。もしもいま、視線で交通事故を起こしたら、立ち直れなさそうだから。


……こんなことを考えないと無理なくらい、心臓が無理すぎて無理。

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