そろそろきみは、蹴られてくれ。
*
「紗奈ちゃん紗奈ちゃん紗奈ちゃん!」
体育館外、出口の扉前。いきなり彼氏が走って突っ込んできたら、彼女はどうするべきか。
たぶん正解は抱きとめる。
わたしは避ける。
……まあ、橘の身体能力には勝てないんだけど。
「紗奈ちゃんさんだあ!」
橘と同時に体育館から出てきた、文化祭でお話した部員さんに嬉々として呼ばれ、思わず返事をしそうになる。
はい! 紗奈ちゃんさんですよ!!
……半分ヤケ。まわりにめっちゃ見られてるし、何言われてるのかも想像つくけど、なんだっていいや。表情だけ、こんな女だけど橘の隣はあげないよ! ってスタンスにしとこ。