そろそろきみは、蹴られてくれ。





「紗奈ちゃん紗奈ちゃん紗奈ちゃん!」


体育館外、出口の扉前。いきなり彼氏が走って突っ込んできたら、彼女はどうするべきか。


たぶん正解は抱きとめる。


わたしは避ける。


……まあ、橘の身体能力には勝てないんだけど。


「紗奈ちゃんさんだあ!」


橘と同時に体育館から出てきた、文化祭でお話した部員さんに嬉々として呼ばれ、思わず返事をしそうになる。


はい! 紗奈ちゃんさんですよ!!


……半分ヤケ。まわりにめっちゃ見られてるし、何言われてるのかも想像つくけど、なんだっていいや。表情だけ、こんな女だけど橘の隣はあげないよ! ってスタンスにしとこ。

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