そろそろきみは、蹴られてくれ。


避けたからだろうか、抱きしめられなくてよかった。……手首つかまれてるけど。


えらい! それで済ませてるの、えらいよ!


いま抱きしめられたら間違いなく蹴ってた。


……いや、橘はきっと、わたしが蹴ったらめちゃくちゃよろこぶんだろうな。


いつか、だれかがわたしの代わりに蹴ってくれないと困る日が来そう。本気でスカート覗こうとしたときとか、また汗を食べようとしたときとか。


……いつまでもわたしは根に持つし、覚えているんだろうな。スカートも汗も、普段当たり前でありつつある存在だから、ほんとう、驚愕。


「ど? 惚れちゃった?」


いま、ここで聞かれるとは思ってなかった。


せめて、まわりに部員さんがいないときかと……いいんだけど。


いいよ、逃げないから。言うから! 言うよ!


──さも相手に言う宣言をしているふうに、自分の決心を固めている。

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