そろそろきみは、蹴られてくれ。
勝っちゃうくらい
「紗奈ちゃんが押さなきゃだと思う」
「えっ、緊張するから無理! 花乃押してよ」
「じゃああいだをとって真咲くん……」
「ええ!? 茅田さんじゃないの?」
橘の家の前。今日は3人、おうちに招待されました。
ちかくまで迎えに行くよ、とは言ってもらったんだけど、わたしは場所を知っているわけだし……悪いかなと思って。
大丈夫だよと言ったら、『じゃあおれはまた、あまいものつくってまってる』とはにかんでくれた。きみが優勝だ。
わたしたち3人は学校で待ち合わせして、それからここまで来た。寒い。寒いけれど、緊張のほうが勝ってしまってチャイムは鳴らせず。
「う……がんばる、がんばるね」
「おお! 紗奈ちゃん押してくれるの?」
「だって、ここに来たことあるのはわたしだけだもん」
「ありがとうございますー!」
来たことのある人間、そして、彼女が押すべきかなと。……これらについては、たぶんちょっとだけ、自分を納得させようと浮かべたという理由も混じっている。