そろそろきみは、蹴られてくれ。


「花乃ちゃさん」


──ん?


「ちゃさん?」


聞き返してから、はっ。


いま理解した。余計なことに首を突っ込んだかもしれない。


「っ、ちが、ちがうごめん間違えた」

「ちがくない! ちがくないよ」


真っ赤になって手をぶんぶんと振っている篠山くんの手首を、花乃ががっしりつかんで。


「ちがくないから、もういっかい」

「……えっと」

「うん」


わたしと橘、はけたほうがいい?


ふたりきりの空間にしたほうがいいのでは……というよりも、そうしないとわたしがつぶされる。

< 597 / 625 >

この作品をシェア

pagetop