そろそろきみは、蹴られてくれ。


「〜っ、涼雅が、そうやって呼んでるから」

「紗奈ちゃん、って?」

「そう。だからおれも、つられちゃった」


このできごとを見ていたから、橘が発した『紗奈ちゃん、って?』の聞き返しにものすっごい心拍数が上がった。バックバクだよ、ひえっ。


「わたし、こうやって呼んでもらえてすごくうれしいよ」

「そう言ってもらえるとおれもうれしいんだけど、その……かっこつけたかった、かなあ、なんて。」


首をかしげる花乃に、篠山くんが「えっと」と続ける。


「つられて、じゃなくて。自分の意思で、ここぞというときに呼べたらもっとよかったな、って思っちゃって」


……自分の意思で、ここぞというときに。


胸に刻みます。

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