そろそろきみは、蹴られてくれ。
「紗奈ちゃん、すきです」
「……は?」
不可解な行動のあとの言葉。
「じゃあ、今日はここまで」
先生の声が、やけにはっきりと聞こえた。さっきまではまったく聞こえていなかったのに、終わりには敏感だ。早く終わってほしかったもんな。
委員長の「起立」が聞こえ、立ち上がる──も、離れない手。
困惑して彼を見上げると、彼はただただ前を向いていた。
視線に気がついたらしく、横目でこちらを確認して。
ぎゅっと、さらに力を込めた。
礼、の声が聞こえても、わたしは頭を下げなかった。放心。そんなわたしに、彼が指をさして大きく笑う。
おいおい、笑うな。
いちばん後ろの席だからって、すき勝手していいわけじゃ……ていうか、いちばん後ろじゃなくてもちょっかい出さないでほしい、え、わたし、告白され……?
手を離され、するり、指先どうしがすれ違う。
「本気」
たったひと単語ののち、片側の口角だけをもち上げた彼が得意げに、わたしの頭にてのひらを置いた。
「〜っ!」
ムカつく!!!