そろそろきみは、蹴られてくれ。


「ゲームの中ですら、離れるのを拒むような人間だけど……それでも?」

「──最後にわたしが3位取れたのって、わざとだった?」

「え? ちがうよ」

「でしょ。橘がそういうひとじゃないって知ってるし、だから、すきなの。だから、橘がいい。……だから、逃げない」


たったひとつのできごとかもしれない。けど。


そのひとつは、わたしのなかでたいせつないろいろなんだ。


橘とのできごとのひとつひとつ。


それらのぜんぶを集合させたら、どれだけの結論を導き出せるか──ってくらいには橘のことをたくさん知ったし、橘に対して思っていること、抱いていることがたくさんあるし、すべてを込めてすきだよ。


最後のレース。わたしが3位で、橘が4位になった。花乃が1位をとったのだって、篠山くんはわざと負けたわけじゃないし。


橘だって、そうなんでしょう?


それじゃあわたし、そういう橘だからすきだって思うもん。


それは、負けず嫌いなわたしの性格に合っているから、とか、それだけじゃなくて。


いままでの橘とのできごとと照らし合わせて、今回のことを考えて、すきだなと思うんだ。

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