そろそろきみは、蹴られてくれ。


「紗奈ちゃん」


名前を呼んでもらって、いとおしい、と思った。


「キス、してもいい?」

「……っ、」

「ねえ、ど?」


ずるいよ、やっぱり橘は、ずるい。


許可が出るまでねだるくせに。


ずるい。ずるいけど、もう、完全に溺れちゃってるから。


「……して、」


顔をかたむけて待つしかないんだ。


……ううん。待ってるんだ。待ちたくなっているんだ。

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