そろそろきみは、蹴られてくれ。


「えっ、あ、まって……」


顔を逸らそうとするのに、逸らしきれない。


「こら、」


橘が後頭部に腕を回しているから? それとも、期待しているから?


すきすぎて、恥ずかしい。正直言って限界は来ている。でも。


すぐに次が来るのは、来るってわかっていながら待つのは、心臓にわるい。けど。


……逸らせないよ。


「いま見るのは、おれのことだけでしょ」


重なって、熱がまじって、ふれて、離れて、角度が変わって、またふれて。


「っ、う」


息が続かない。くるしい。……うれしい。


橘がすき。すきになってくれて、ありがとう。たいへんなくらいにすきだよ。

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