そろそろきみは、蹴られてくれ。


「もういっかい」


橘のほうが、もっともっと驚いているよね。


「……っえ」


本気トーンの『え』にどきり。


う……がっついてるみたいかな。


だって、またしちゃうよって、言うから。橘が言ったから。


「………………」


くちの開いた状態でしばらく固まっていた橘が、あの白い八重歯でわらう。目が据わっている気がするのは、わたしの気のせい?


「じゃあ、紗奈ちゃんからしてくれる?」

「えっ?」

「おれ、練習試合の日からまってるんだよ」


橘、言ってたけど……でも、するなんてわたしはひとことも。

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