そろそろきみは、蹴られてくれ。
「ね、」
目も閉じずに、まっている。
「紗奈ちゃん、まだ?」
「えと、」
どうしよう。心臓の音が、ぜんぶ、聞こえちゃえばいいのに。
聞かせて。わたしの心臓のうるささなんて、橘はとっくに知っているんでしょ。
わたしにも、聞かせて。
普段、橘も。
キスの前、こんなふうにドキドキしていたりするのかな。
「はーやーくー」
「うぅ、ちょっとまって……」
「まてない」
しゅるりと指をとられ、指先が撫でられる。
「……ねぇ、まず、目……閉じて」
「うん。……はい、閉じた」
深呼吸をして、意を決すた。
顔をちかづけ、目を閉じて。
「ごめ」
キスをした。