そろそろきみは、蹴られてくれ。





「紗奈ちゃん、帰ろ」


……どうしてそんなに元気なんだろう。清々しいほどの笑顔。まぶしっ!


わたしは酸欠するかと思った、鍛えようかな。動機が不純?


「……え? 帰るって、どこ?」

「送る」

「だ、大丈夫だよ、まだ真っ暗じゃないし、帰れる」

「ううん、いっしょに帰ろう」


まっすぐな目に見つめられて、う、ゆらぐ。いや、……でも。


「わるいよ、いいよ。玄関まで来てもらえたらそれでうれしいっていうか」


くらくらするキスのせいというべきか、まだ名前呼びはできていない──けど、そのために、わたしに決心がつくまでいっしょにいて! はどうかと思ってしまって。


だってだって、わたしの判断が遅いのが原因といいますか……。

< 615 / 625 >

この作品をシェア

pagetop