そろそろきみは、蹴られてくれ。
*
「紗奈ちゃん、帰ろ」
……どうしてそんなに元気なんだろう。清々しいほどの笑顔。まぶしっ!
わたしは酸欠するかと思った、鍛えようかな。動機が不純?
「……え? 帰るって、どこ?」
「送る」
「だ、大丈夫だよ、まだ真っ暗じゃないし、帰れる」
「ううん、いっしょに帰ろう」
まっすぐな目に見つめられて、う、ゆらぐ。いや、……でも。
「わるいよ、いいよ。玄関まで来てもらえたらそれでうれしいっていうか」
くらくらするキスのせいというべきか、まだ名前呼びはできていない──けど、そのために、わたしに決心がつくまでいっしょにいて! はどうかと思ってしまって。
だってだって、わたしの判断が遅いのが原因といいますか……。