それ以外の方法を僕は知らない
ガタ、と席を立って再び彼の元へ出向く。
呼んでも振り向いてくれないのも承知の上で彼の名を呼び、先程同様、そっと肩に触れた。
少しだけ肩を揺らした彼はヘッドホンを外して私の方を見る。
「…またお前かよ」
「うん。私」
「…なに」
「いつも何聴いてるの?」
怪訝そうな顔つきは変わらず、私の問いかけに彼は大げさにため息をつく。
「お前に関係ない」
「だって克真くん、いつもヘッドホンつけてるじゃん」
「だったら何」
「それさ、頭重くならない?」
「……はぁ?」
ずっと思っていた疑問を突然投げつける。
「重くないの?」
「…なにが、」
「絶対重いでしょ。私ヘッドホンなんか買ったことないよ」
「…いやこれは誕生日に貰って、」
「あ、そうなんだ。凄いカッコイイよねそれ」
「…どうも」