それ以外の方法を僕は知らない





彼は、きっと根はすごく良い人なのだと思う。

眉間には次々と皺が増えていくけれど、彼はいつも受け答えはちゃんとしてくれるし、嫌そうにしながらも、話を聞く時は少しこちら側に耳を傾けてくれている。



「ねぇ」

「…なに?」

「克真くんって、実はシャイなんでしょ」

「……バカなの?」




なんだ、そういうことか。

「うざい」とか「はぁ?」ばかり連呼するのは、人と話すことが苦手で恥ずかしいからなんだ。

「そうでしょ?」ともう一度確認するように聞けば、彼の眉間には一層しわが寄った。




「んなわけねえだろ」

「えー」

「…バカかよ」

「酷いなぁ」




口は悪いけれど、本気で嫌がっているわけではなさそうだ。

嫌がってるわけじゃなければ問題ない。
謎のポジティブ精神で、私はケラケラ笑いながら椅子を引いて彼の隣に座った。




「…なに、帰んないの」

「帰んない。もっと話そうよ」




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