それ以外の方法を僕は知らない





折角2人きりになれたのだ。

今までそんな機会がなかった分、彼と関わるには十分すぎるこの時間を無駄にするわけにはいかない。


彼に向くように頬杖をついてそう言えば、彼は「…うざい」と呟くように言って、ふいっと窓の方を向いてしまった。



…うーん。


誰かと仲良くする気はないみたいだ。

笑ってもくれないし、それ以前に目も合わない。
くだらないと言わんばかりの澄ました顔をして、私に興味なんて1ミクロも持ってくれない。




「克真くん」




本日何度目かのその名前を口にする。

まだヘッドホンは付けていなかったので、肩を叩く必要は無かった。
名前を呼べば、彼は怠そうにしながらもしっかり振り向いてくれる。




…ほら、やっぱり良い人なんだよなぁ。



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