それ以外の方法を僕は知らない
「ねえ、一緒に行かない?」
少しだけ控えめに、もう一度彼に聞く。
一人の方が自由に楽しめるからという理由で友達と映画に行く習慣がなくなってしまった私は、返ってくる彼の答えに少しだけ緊張していた。
…「行く」って、言ってくれないかな。
これって、友達のいない彼にとっては、異例の事なんじゃないのかな。
本人に言ったらきっと「友達いる」と言って譲らないんだろうけど。
「…克真くん?」
突然流れ出した沈黙に耐えきれず彼の名前を呼ぶと、彼は溜めに溜めた後、
「……字幕派?」
そう、言葉を零した。
「字幕で見るなら行ってやってもいいけど」
思わぬ問いかけに目をパチパチさせながら固まる私を他所に、彼はそんなことを言う。