それ以外の方法を僕は知らない
「あ。お前バカだから吹き替え派?」
「またバカって言った」
「だってバカじゃん」
「えーでも、私も字幕派だから私がバカってことは克真くんも同じくらいバカってことになるよ」
「…俺はテストで6点は流石に取らない」
確かに私は彼に比べたら頭は良くないかもしれないけれど、洋画はしっかり英語で聞きとる人だ。
最初は吹き替えで見ていたけれど、せっかくの洋画なのに日本語で話しているのを見るのはなんだか勿体ない気がして、高校生になってからは字幕で見るようになったのだ。
「…いーよ、行ってあげても」
彼はそう言うとスマホから目を離し、「仕方ねえな」と言わんばかりに眉を少し下げて頬杖をつき直した。
…ええ、ちょっとまって。
自分から誘ったものの、本当に行ってくれることになるとは正直思っていなかったから、まさかの展開に動揺が隠せない。