それ以外の方法を僕は知らない





「で、帰るの?」



つい頭の中でいろいろと考えを巡らせてしまっていた私に杏奈(あんな)が言う。



ああ、そうだ。忘れてた。


手元にある≪課題未提出者リスト≫と書かれた1枚のクラス名簿に目を通す。
そこには、クラス全員の名前と学籍番号、それから課題の提出についてが〇×形式で記入できるようになっている。




えー…っと、彼はたしかまだ────




―――下館 克真 ×





…そうだ。彼はしっかり“常連”だ。




「まだかかりそうだから先に帰ってていいよ、杏奈」



名簿に載せられた彼の名前とその横に書かれた×印を確認して、杏奈のほうを向いてそう告げる。

彼女はよっぽど早く帰りたかったのか、「おっけー」と軽く返事をすると足早に教室をあとにした。


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