それ以外の方法を僕は知らない
「今更だろ。どうせ学校辞めたら俺の事なんてすぐ忘れるし」
「…っでも、」
「俺が良いって言ってんだからそれでいいじゃん。つーか、音々には関係ないだろ」
彼にこれほど強い言い方をされたのは、初めの頃に話しかけた時以来だ。
私の言葉は要らないって言われているようで、返す言葉が見つからない。
「…音々にはわかんないから言えるんだろ」
「克真くん、」
「だんだん音が聴こえなくなるのも、大事な人がいなくなるのも、…好きな人に気持ちが伝わらないのも、……っ、ぜんぶ、音々にはわかんねえよ…」
克真くんはそう言うと、前髪をくしゃくしゃと掻いて「…ごめん、」と小さく呟いた。
誰もいない教室は静寂そのものだ。二人分の呼吸だけが響いている。
謝って欲しくなんてない。
違うんだ。
そうじゃないんだよ、克真くん。