銀色ハウスメイト



「風呂、入ってきて。」


「わたしが先に入っていいんですか?」


「はやく入らねーと風邪引くけど。」


「……そうかもですけど、ここは桜井くんの家で…」


「グダグダうるせえ。」




口はとてつもなく悪いけれど、言ってること全部に桜井くんの優しさがあるような気がして。

今度は素直にうなずいた。




「なるべくはやく上がりますね。ありがとうございます。」


「……別に急がなくていい。」


「へへ、ありがとうございます。」




桜井くんに頭を下げてから、お風呂場へと入る。


お風呂の中も綺麗に整頓されていて、やっぱり生活感のかけらもない。

さすがにもうここの住人を桜井くんなのか、と疑うことはなかったけれど。




「……あったかい…」




湯船に浸かれば、冷え切った体が痛いくらいに温まっていく。


あまりの気持ちよさに寝そうになって頬をひとしばき。




パシッ!!




そうすれば緩んだ心が締まる気がして、頭がこれからを考えることに切り替わった。


住ませてもらうなら、まずは桜井くんにバイト先を探してもらおう。

わたしは自分でお金を稼いだ経験なんてないし、桜井くんは一人暮らしだから、きっとバイトでもしているんじゃないかな。


だったら詳しいだろう。…と思いたい。




桜井くんにはお世話になった分のお金を返して、一人で生活していける分のお金が貯まるまでの間。

その間だけ。



彼にはたくさん迷惑をかけてしまうことになるけれど、自分も何かしないと。


料理に掃除。それと全般の家事。


うん、きっとできる。




せめて、桜井くんを楽だと思わせるくらいには頑張らないと。




「よし!」




そう心に決めて、わたしは勢いよく湯船から出た。


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